中国嫁のトリセツ

中国人の嫁をもらって気がついたことなどをツラツラと書いています。

Lost in translation

先日、目に違和感があるというので、うちの嫁(ランラン)を家の近所の総合病院に連れて行った。病院などに行く時は、基本的には初診の時だけは同行するようにしている。

 
受付を済ませて眼科に通され、診察の前に視力などの検査を受けていたのだが、そこに車椅子に乗せられたご老人がやってきた。服装からして入院中に検査を受けに来たんだろう。検査担当の看護師さんが2人ほどで対応していたのだが、ご本人の反応はほとんどなく、ひょっとして意識障害?と思ってしまうほどだった。
 
ランランの検査も終わり、並んで座って診察を待っている最中も、我々はその老人に視線が釘付けとなっていた。看護師さんが微笑みかけると、ようやく笑顔を返したのが初めて見る反応だった。しばらく見ていると、看護師さんが「いーあるさんすー」などと伝えているのが聞こえてきた。
 
土井さん「あの人、中国人じゃないの?話しかけてあげれば?」
ランラン「え、そうなの?」
 
そこで看護師さんに聞いてみると、やはりその老人は中国人で、意思の疎通が出来なくて困っているとの事。そこで、ランランが話しかけてみると奇跡?が起こった。
 
ランラン「こんにちは。あなたは中国人ですか?」
老人「そうじゃよ」
ランラン「私も中国人です。どこの出身ですか?」
老人「大連じゃ」
ランラン「私は安徽省の出身です。安徽省は知っていますか?」
老人「知っとるよ」
 
これまで、ほぼ無表情、無反応だった老人から笑顔がこぼれて、会話をし出したことで、周囲は一気に色めき立ったのだ。
 
その後も話してみると、老人の娘さんが日本で働いているので来日して日本に住んでいる事、娘さんは仕事が忙しくてなかなか面会に来れない事などが分かった。ただ、
 
老人「她不要我了」
 
と言われたのには、少しばかり心が痛んだ。本当に娘さんとの関係がギクシャクしているのか、老人が娘に負担をかけていることを気にかけての発言かは分からなかったが。
 
いずれにしても、誰も中国語を話さない環境に一人置かれていて、気持ちもかなり落ちていたのは間違いないだろう。そこに久方ぶりに中国語を話す機会を得て、急に元気になったとしても、何の不思議もない。
 
ついでにランランが通訳して、これからどのような検査を受けるかなどを説明してあげた。この病院には通訳さんはいないようで、ランランは看護師さんたちにも感謝され、最後老人と別れる時も、老人も手を振って名残惜しそうにしていた。
 
子供なら誰にも親を思う気持ちが多かれ少なかれあると思うが、中国人、さらにランランのそれは人一倍強いので、きっと田舎の両親のことも思い出したに違いない。
 
一応、ランランには、こういう日本に来た中国人相手に通訳する医療通訳という仕事もあることを教えておいた。やるかどうかは本人次第。ただ現状の日本語レベル的には少しハードルが高いかな?
 

 

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